車窓から見える景色も、車内販売のカートも、ありとあらゆる色がそこには映ってる。
僕達にとっては当たり前のことだと思ってた。でもその全てが、君の興味の中心に渦巻いているんだよね。
君と同じ視線で世界を見てみたい。
僕の事は、どう映るのかな?
3.Can't take my eyes off you.
ジェームズは荷物を上げ終えると、の隣に座った。
暑い暑いと言いながら、手で顔を仰いでいる。
四人も一通り自己紹介を済ませた。の名を言った時は、ジェームズもシリウス同様驚いていたが、今では落ち着いて座っている。
ジェームズの梟が、リリーに見つめられホーと鳴いた。
「それにしても・・・何だって入学当日から逃げる必要があったんだよ、お前」
「僕も疑問だね。何やったの? 君」
シリウスとが続けて聞いた。ジェームズは思い出すように天井を仰ぎ見る。
「う〜ん・・・特に何もしてないんだけどなー・・・。歩いてたらさ、黒髪の超絶美人さんがいきなり追っかけてきて。怖かったよー。目が光ってた」
「スカートでもめくったの?」
恥じらいのかけらも無く、が言った。
リリーは横で頭を抱える。苦笑しながら、ジェームズは答えた。
「ホントに僕は何もしてないよ。・・・リリー、その疑いの眼差しはなんだい? ホントだって!
だからね、普通に歩いてたら、黒髪超絶美人なお姉さんがいきなり・・・」
「「黒髪・・・」」
シリウスとが同時に呟いた。一方は引きつった顔で、もう一方はキラキラと瞳を輝かせて、ジェームズを見つめる。
「ねね、ジェームズ。その超絶美人なお姉さんって、すっごく髪長かった?」
「でもって高飛車な喋り方で、自分が世界の中心! みたいな?」
二人に尋ねられ、ジェームズは瞬きをした。
「よく分かったね」
途端にシリウスが崩れ落ちる。
「うわぁー! ベラの恐怖がぁー!」
「何? といい、その超絶美人さんといい、またあなたの知り合いなの?」
魔法界に於ける純血貴族というのは、一体どれほど顔が広いのだろうか。
思わずリリーの口から溜め息が漏れる。
そんな彼女の腕を、が揺すった。
「知り合いっていうか、シリウスの従姉弟なんだよ! あのね、すっごく綺麗で格好いいの!」
「滅茶苦茶女王気質で、かなり惚れやすい。よかったなージェームズ、気に入られて。
何があっても、俺は手助けしねー」
「うっわ、何それ! よかったなーとか言いながら、余り良くなさそうな印象を受けるんだけど!しかも助けてくれないの!?」
阿呆らしいシリウスとジェームズの会話。本当に彼らは今出会ったばかりなのか、つくづく疑問である。
リリーの斜め前では、とカレッジが体を震わせ、笑っていた。
目には涙まで浮かんでいる始末だ。
「二人とも面白すぎるから・・・きっといいコンビに・・・もうなってるね。寮で同室になった日には、その部屋の人は苦労するだろうな。可哀相に」
「「いやいや、お前(君)のその突っ込みが重要なんだと思いますよ?」」
二人は同時に言って、顔を見合わせる。
「ハモるなよ」
「シリウスこそ」
リリーはついに堪えきれず、声を立てて笑った。
花が開いたようなその瞬間を目撃したジェームズ。その時、彼の脳内に春の花が舞い乱れたのは、勿論言うまでもない。
一人の少年がトキメキを感じる中、他の四人と一匹は昼食の準備を始めていた。
シリウスはドアの外をうかがい、カートが来るまでの大体の時間を計算している。その間も彼の腹の虫はその存在を主張するかのように鳴き続けている。
ジェームズの梟が、かごの中で羽ばたいた。放心中のジェームズに代わり、カレッジがかごに近付いた。しばらくフンフンと尻尾を振り、を振り返る。
「、コイツにも餌やんないと」
猫の発した言葉に、ジェームズが我に返り、が好奇心一杯の顔で手を叩き、リリーが驚いたように体を震わせた。
「わあ、すごい! ホントに喋ったよリリー! すごいね、使い魔って。喋れるペットー。いいな、あたしにも使い魔居たらいいのにー」
「魔法界って、奥が深いわ・・・喋る猫? 考えらんない。ジェームズのその梟は喋らないの?」
リリーに声をかけられ、ジェームズは少し緊張してしまった。
一度つばを飲み込み、元の爽やかな笑みを浮かべる。
「残念だけど、僕のウォルは喋れないよ。魔法界でも、喋る動物っていうのはあんまり居ないんだ。特にホグワーツ家の使い魔は、その貴重な動物達のなかでもまた別格なんだよ」
彼はにっこり笑って言ったのだが、リリーは言葉に詰まったその一瞬を忘れられなかった。
ジェームズとしては、好意の余りそのような行動を取ってしまったわけだが、リリーにはそんな内心の葛藤など、知る由も無い。嫌われたように思えたのだ。
とはそれを見て、密かに顔を見合わせた。
は肩をすくめ、そしてドアを見てパッと立ち上がった。
車内販売のカートが来ている。
既に昼食とお菓子を買い漁っているシリウスの横には並び、これまたもの凄い量のお菓子を購入した。
「、よく食べるんだね。ご飯じゃなくて、お菓子だけど」
少し呆れ気味には言った。
色とりどりのお菓子類が、彼女の膝に降り立つ。はにっこり笑って頷いた。
「ん。だっておいしいもん。も食べる?」
「いや、僕は甘いの苦手だから・・・」
「食べる!」
急にカレッジが身を起こした。濃い青の瞳を爛々と光らせ、の膝に飛び移った。
は一瞬驚いていたが、すぐにカレッジを抱き上げた。
「気が合うね。甘いの好きなの? いいよ、何食べたい?」
「蛙チョコ」
「ほいほーい。リリー、ジェームズ、シリウスー。三人も食べるー?」
蛙チョコの袋を持って呼びかけると、シリウスが首を振った。
「勘弁。食ったら瞬間俺は死ぬ」
「よぉっし、あげてみようか。」
「あははっ! OKジェームズ!」
「おいコラ」
冗談を言うノリの二人だが、シリウスはこの時思った。
―――この二人なら間違いなく、やる・・・
「まあまあシリウス、落ち着いて」
が軽くシリウスの腕を叩いた。
ジェームズは笑いながらヒラヒラと手を振る。
「いやだなぁシリウス。そんなことこの優しい僕がする訳ないだろう?」
「ジェームズ、言葉に信憑性が無いよ」
「うわー、効いたな、ソレ」
そう言うとジェームズは、右手でシリウスの頭を、左手での頭を掴み、自分の方に引き寄せた。
彼の眼鏡が、怪しげな光を放つ。
「ところで二人とも。物は相談なんだけど・・・」
三人が声を潜めて語り合う傍らで、リリーは蛙チョコの袋を一つ摘み上げた。
「魔法の世界は本当に不思議ね。蛙チョコ?」
は一つを口に入れ、幸せそうに食べながら頷いた。
「ん。たまーに動くのが入ってるよ。リリーも食べる? どんどん取ってって」
「動くの!? まるでロシアンルーレットだわ。んー、じゃあ、一つだけちょうだい」
袋を慎重に開け、中のチョコを取り出した。
と、途端に彼女は袋を取り落とし、悲鳴とともに飛び上がった。
「わぁ、本当に当てちゃった・・・」
リリーの落とした袋から飛び出した蛙は、見事カレッジの胃袋に捕獲された。
前足でチョコの半身を押さえ、カレッジはリリーを見る。
「これくらいでびびってるようじゃ、この世界では生きていけないぜ。
食べてみろよ、美味いから」
怯えるリリーの手に、は一つ、チョコを乗せた。
「おいしいよ。コレは動かないから、食べてごらん」
恐る恐る、リリーはソレを口に運ぶ。瞬間に、顔をパッと輝かせた。
「おいしい・・・」
「でしょ?」
「だろ?」
とカレッジが得意そうに笑った。
その頃・・・・・・
「ってーなジェームズ!」
「煩い、シリウス。で、何?」
はシリウスの頭を一回はたくと、ジェームズに向き直った。
ニッと笑うジェームズ。
「僕は思ってたんだけど」
「うん、何?」
「学園生活には、波乱が必要だよね」
「「・・・・・・は?」」
「ホラ、こう、どーん! とでっかく」
「いやいや、ジェームズ? ちょっと待って?」
一人で話を話を進めるジェームズを、は制した。
「待って待って。波乱? 何が言いたいの?」
シリウスも困惑した表情だ。
輝く眼鏡に負けず劣らず、輝いた顔でジェームズは言った。
「僕はトラブルメーカーだからね。前から考えてたんだ。学校に行ったら、思う存分暴れようかなって。
ねぇ、二人とも、一緒に悪戯仕掛け人を発足しない? 僕達ならできると思うんだ。
シリウスは実行力がありそうだし、は先生達を欺くのに一役買ってくれるだろう?」
突然言われた言葉に、二人は呆気に取られた。
やがてシリウスが右手を差し出す。
「つまり、お前の悪友になれってことだな? 面白そうじゃん。その話、乗った。」
「ありがとうシリウス。は? どう? 嫌ならいいんだけど・・・」
控えめに問われて、も右手を差し出した。
「僕、こう見えて悪戯って大好きなんだ。それに、ストッパーは必要だろう?」
「よく分かってるじゃないか、。」
にやりと笑うと、ジェームズは眼鏡を押し上げた。
「ちょっと、三人とも。」
声がかかる。
三人はすっかり忘れていたのだが、リリーとがこちらを見ていた。
「私達着替えるから、ちょっと外に出ていてくれない?」
「ああ、OKエバンス。」
ジェームズは二人の肩を叩く。三人は立ち上がり、外に出た。
やがてホグワーツの新しい制服に身を包み、二人がドアの外に出てきた。入れ替わりに男子三人が中に入る。
リリーは通り過ぎる人を見て、自分のネクタイとローブをつまんだ。
「皆、色が違うわね。私達の学年は黒なのかしら?」
そう言われ、は周りを見た。
軽く首を振る。
「ううん、寮によって違うの。
グリフィンドールは紅と金、ハッフルパフは黄色と黒、レイブンクローは青と青銅色、スリザリンは緑と銀、だったかな?
因みに、ホグワーツ家の人はどの寮にも属さない事になっているんだって。名義だけの入寮ね。だからカラーも皆とは違うんだよ。」
「ふーん・・・ねぇ、私達同じ寮になれるかしら。」
「どうだろうね。でも・・・」
一度、言葉を切る。
―――『ねぇ、、分かるでしょう? どう転んでも・・・・・・』―――
「どう転んでも、それが運命だったら、あたし達は逆らえないよ。」
そう、ママが言ってた。と、は笑って付け加えた。
ホグズミード駅に、汽笛が鳴り響く。
白い煙とともに、ホグワーツ特急はやってきた。
煙の中に見えるランプの光を目指して、一年生は歩いた。ゆらゆら揺れる小さなランプを持っているのは、身長も体重も人の二倍はありそうな大男、ルビウス・ハグリットだ。
「イッチ年生ー! イッチ年生はこっちだー!」
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